Money Pedia

メガバンク出身のファイナンシャルプランナーによる、なるべくわかりやすい言葉で金融商品についてまとめていくブログです。

【学資保険】デメリット【必要ではないと思う理由】

保険会社の人は学資保険に入る人が少ないって聞いたけど、なんでだろう?

そうですね。統計を取ったわけじゃないけど、少ないと思います。僕も入りたいと思わないですし。

 

学資保険のメリットを知りたい方はこちら

bankmoney.hatenablog.com

 

学資保険のメリットを読まれた方は『なんだ、学資保険はやっぱり良いんだな。』と思われたかもしれません。

 

僕の基本的な考え方としてですが、

 

保険商品は良い悪いではなく、合う合わないで考えるべき

 

と考えています。

 

別に学資保険が悪い商品と思っているわけではないですが、少なくとも僕の考え方やライフプランには合っていない、そして多くの方のライフプランを考えると学資保険が合ってはいないということです。

 

では学資保険のデメリットについてまとめていきたいと思います。

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学資保険のデメリット

 

1.学資保険で本当にお金が増えるの?

え?メリットのところで学資保険の方が銀行よりも増えるからお得ですねって見たけど。

もちろん、それは本当です。しかしそれはあくまで銀行と比較した場合の話に過ぎませんし、実は本当に目減りしてしまう可能性も秘めているんですよ。

 

もう一度簡単に復習すると、今の時代の学資保険で最も増えるプランでも200万円をトータルで預けると約20年間で216万円程度になって戻ってくるというイメージです。

同じ条件で銀行に預けたとすると200万円に4,000円のおまけがついて戻ってくるというイメージです。

 

これは勿論事実ですが、あくまで銀行預金と比較をした場合の話です。

例えば学校のテストで常に赤点、通信簿はオール1の勉強が苦手なAくんがいたとして、その隣の席にテストは赤点ではないけど常に30点台で通信簿はオール2のBくんがいたとします。

Bくんのこと勉強ができて成績が良いとは言わないと思いますが、それと同じイメージです。

 

とは言え、銀行よりは増えるんだし、どうせ銀行に預けるなら少しでも増える学資保険でいいんじゃないかしら?

実はこの例え少額であっても絶対に増えると言う点に罠が潜んでいるんですよ。

 

普段商談をしているとお客さんに『元本保証なんですか?』と聞かれることがあります。

例えば銀行の預金なんかはいつ出しても自分が預けたお金が減ると言うことは無いので、元本保証と呼びます。

 

しかし元本保証には実は2つの意味があります。

 

1つは数値的な元本保証。

これは正に銀行の預金のように預けたものをいつ取り出しても元本が減ってはいないという意味です。

 

もう1つは価値的な元本保証です。

例えば2001年にある物は5,500円の価値がありました。

この時に銀行に5,500円を預けていたとします。

この頃の金利は0.02%ですが、この金利が今まで17年間ずっと続いていたと仮定します。

そうすると19円利息が付きます。

しかし先程5,500円だった物は7,400円まで値上がりしました。

 

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数値的な元本保証と価値的な元本保証

確かに5,500円というお金は減っていませんが、2001年には5,500円で買えていたものが17年経った2018年には買えなくなりました。

これ、実質的にお金が目減りしているということを表します。

 

ちなみに2001年に5,500円だったものが、今7,400円に値上がりしているものとはディズニーランドのワンデーパスポートの価格です。

17年というとちょうどお子さんが生まれてから大学に行くまでの期間ですね。

 

ではかんじんの教育費はどうなっているのでしょうか?

お子さん産まれたりすると皆さんひよこクラブとか色々と雑誌を見て『教育費がこれだけかかるのか〜』となって学資保険等で貯める金額をゴールと設定しがちですが、これは非常に危険です。

お子さんは今大学に行くのではなく、約18年後に大学に行くということがポイントとなります。

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出典:文部科学省 教育費の推移

これは文部科学省で発表している過去の教育費の推移です。

直近の17年間で見ると大体10%程度値上がりしていることがわかります。

直近の17年間はどちらかと言うと物の値段は値下がりしていたので、教育費の値上がりは相対的に大きいと思います。

 

もちろん今後のことはどうなって行くかはわかりませんが、2015年時点で文部科学省2031年には国立大学の授業料が約93万円になると試算を発表しました。

大学の運営のために国から運営費交付金というものが交付されているのですが、これはその辺との兼ね合いでの試算になります。

 

文部科学省は『計算上の数字で実際に上がると言うことは想定していない』と発表を撤回しておりますが、今後教育費が値上がりして行くと言うことは想定しておく必要はあると思います。

 

ここに現在の学資保険の水準を考えると約20年かけて8%程度のリターンとなりますが、教育費の水準が今後20年間で8%以上値上がりしてしまうと実質的には損をしているということになるため、本当の意味で学資保険でお金が増えるのか?という点が疑問符となってしまいます。

 

POINT
  • 学資保険は現在の銀行の預金金利よりも増えるのは確か。
  • 元本保証には数値的な元本保証と価値的な元本保証の2つの意味がある。
  • 教育費は過去値上がりを続けている。
  • 今後も教育費は値上がりすることが予想されている。
  • 教育費の値上がりに対して学資保険でどの程度増えるのか考える必要がある。

 

2.学資保険の保障でパパが亡くなっても安心出来る?

良し!学資保険はソニー生命に決めた!これでパパに万一のことがあっても安心ね。

学資保険で本当に安心できるのでしょうか?

 

学資保険の保障の仕組みは、途中でパパが亡くなってしまった場合にそれ以降保険料を支払わなくても、決められた時期に決められたお金が受け取れるという仕組みです。

 

例えば学資保険を契約して 、1ヶ月分保険料を支払った段階でお父さんが亡くなってしまうとそれ以降は1円たりとも支払う必要はありません。

しかしその後、学資保険からお金を受け取れるのは約18年後という話になります。

 

当然学資保険に契約して1ヶ月ということはお子さんは0歳とか1歳でしょう。

ということは、そこから幼稚園や保育園、小学校に中学校、高校まで行かないと大学には行けません。

 

仮に学資保険のお金で大学のお金はまかなえたとします。

それまでのお金は大丈夫でしょうか?

 

お子さんが0歳とか1歳ということは場合によってはお母さんは仕事を辞めた直後、もしくは育休期間中とかでしょう。

そうするとすぐには仕事に復帰するというのも難しい場合もあります。

しかしそういった時期を乗り越えて初めて学資保険からお金を受け取れるのです。

 

しっかりと生命保険に入っているという場合は問題ないと思いますが、学資保険でお金を貯めるという点と保障という点をバラバラに考えると効率が悪くなってしまうという場合が殆どです。

 

個人的には学資保険は保障という機能が弱いわりに貯蓄という機能も弱いと思います。

 

保険が付いているからそれだけで安心と思うのではなく、どの時期にお父さんが亡くなってしまうとその後どうなるのか?ということを具体的にイメージしてみると僕は学資保険で安心とはとても言えないと思います。

 

POINT
  • 学資保険はお父さんが亡くなってもすぐにお金が受け取れるわけではない。
  • ということは亡くなった後、学資保険からお金を受け取れるまでの生活費や教育費は別途準備をする必要がある。
  • 学資保険は保険機能も貯蓄機能も中途半端。

 

3.学資保険に強制力があるということはデメリットでもある?

学資保険なら強制的に貯めてくれるから教育費をしっかり貯められて安心ね。

強制的に貯められるのは確かにメリットですが、同時にデメリットもあるんですよ。

 

お金を貯める方程式は収入−貯蓄=残った分から支出

 

です。 

この方程式を使えるので学資保険で強制的にお金を貯めるということは確かに間違っていません。

 

では例えばあなたが今後自宅を買ったとします。(現在既に購入済みでも構いません。)

その場合、住宅ローンを組むと思います。

 

住宅ローンの金利は何%でしょうか?

低いところでも0.45%程度だと思います。

 

では学資保険の金利はどうでしょうか?

約20年で8%増えるということは単純計算すると年間0.4%です。

 

0.45%のコストを住宅ローンで支払っているのに、0.4%の金利でお金を貯める。

 

極端に言うと赤マーカー 高金利で借金して、その借りたお金を低金利のところにわざわざ避けてお金を貯めているというわけです。

 

別に住宅ローンじゃなくてもいいです。

車のローンでもなんでもいいですが、これって勿体無くはないでしょうか?

 

しかしここで気がついても学資保険は基本的に始めたら最後までやめられません。

場合によっては、始めてから13年近く経っていればやめても払った分が全て戻ってくるとなっていることもありますが、身動き取れなくなっているケースが多いと思います。

 

なので学資保険は始めるときにしっかりと将来のことを整理してから始めないと、得をするために始めたのに結果的に損するために貯金しているという結果になりかねないというわけです。

 

POINT

お金の貯まる方程式は収入から貯金して、残った分を使う。

学資保険で強制的にお金を貯めることは、諸刃の剣になりかねない。

学資保険の利率と住宅ローン等の利率と比較をするべき。

 

4.僕が学資保険をお勧めしない理由のまとめ

  • 現在の学資保険の金利と予想される今後の教育費の値上がりを考えると、実質的に損をするために契約すると言うことに繋がりかねない。
  • 学資保険は貯蓄機能も保険機能も中途半端なので、学資保険を考えても結局他のことも考える必要がある。
  • 強制的にお金を貯めて行くと言うことは今後のお金の流れを固定させることになってしまうが、その分を住宅ローンの繰り上げ返済等にあてた方が有利となる場合が殆ど。

とはいえ、お子さんのために教育費をどうしていくかはしっかりと考える必要はあると思います。

 

大切なのは「学資保険に入ったからといってお子さんが大学まで行けるわけでもないし、学資保険に入らなかったからといって大学まで行けないわけじゃない。大切なのはお子さんを大学まで行かせてあげたいと言う目的に対してどのような手段が有効なのか考えること。」です。

 

個人的にはお子さんが生まれたときに何も考えずに、いざ大学行くときにお金が足りないから奨学金でいいかと安易に考えてしまう親御さんよりも、しっかりとお子さんの教育費のことを考えて、損はしたかもしれないけどしっかりお子さんに大学まで行かせてあげられた親御さんの方が好感は持てますし、自分の親だったら嬉しいなと思います。

 

そういった親御さんがお子さんの教育費のことを考える際に少しでもこの記事がお役に立てれば幸いです。